Osaak Craft Beer Stories

やってみなはれ精神で
枠にとらわれないクラフトビール造り

2025.08.08

東邦レオ株式会社 Nakatsu Brewery 鈴木 悟氏

ただのブルーパブでもない、委託醸造施設でもない、クラフトビール業界でも珍しい小規模ODM専門のブルワリーが中津にある。緑化事業から生まれた型にとらわれないブルワリー「Nakatsu Brewery」が生まれたきっかけを醸造責任者の鈴木氏に聞いた。

緑化事業からクラフトビール事業が生まれたわけ

Nakatsu Breweryを運営する東邦レオ株式会社は緑化事業やクライアントが所有する不動産の価値を向上するバリューアップ事業を展開する会社である。ビール醸造に縁もゆかりもなかった東邦レオ株式会社は何がきっかけでブルワリーを立ち上げることになったのだろう。

ビールが好きでも、ビールを知らない
Nakatsu Breweryは色々ご縁が重なって生まれた事業ではあるのですが、特に当時同時並行で走っていた2つのプロジェクトが掛け合わさりNakatsu Breweryが生まれました。 1つ目は、ホップ栽培事業者との出会いでした。 大阪梅田エリアの都市開発事業のうめきた2期の暫定土地の中でホップの栽培をされている方がおられたのですが、開発に伴って栽培地を移転する必要がありました。Nakatsu Breweryを運営する東邦レオは以前から屋上菜園の緑化事業や不動産価値向上事業を推進しており、その移転先を探すお手伝いをすることになりました。
ビールが好きでも、ビールを知らない

2つ目は、中津の歴史あるビルを活用したコミュニティ事業開発です。 うめきた二期の開発に伴い、梅田エリアは大きなムーブメントが来て、高層ビルの建設が進む一方、中津駅周辺は面白い事業者さんが多いにも関わらず、くすぶっている印象がありました。現在Nakatsu Breweryが活用しているビルのオーナーさんも、大阪万博に向けてビルの建替えを検討していました。ただ、私としては中津駅ならではの、土着の文化や街並みがなくなっていくことにもったいなさを感じていました。 そこで考えたのが、中津の歴史あるビルを活用したコミュニティ事業でした。ビルを活用して人が集まれる場を作り、体験コンテンツがあれば、面白いんじゃないかと考えるようになりました。そこで先ほど説明したホップ栽培事業とビルを活用したコミュニティ事業を掛け合わせるアイデアを思いつきました。 具体的には、駐車場として利用されていた場所に縁側を作り、人が集まるパブリックな場にしました。さらにホップ収穫体験や、そのホップを使ったビールを外注して醸造してもらい、イベントで振舞うなど気軽に人が集まるパブリックな場づくりを進めていきました。

人がある場にクラフトビールあり

クラフトビールがもたらす本業へのシナジー

最初は人が集まる縁側だけがあり、室内の活用方法は未定でした。ビール醸造をスタートさせるきっかけとなったのは、月に1回開催していたイベントでのオーナーさんとの会話でした。「縁側に面した駐車スペースをビール醸造施設にしたら面白そうですね」と提案をすると、かなり興味を持ってくれたんです。 海外の事例を見ていても、クラフトビールが根付いている街は活気づいているケースが多く、中津でもクラフトビールで地域活性が出来るのではないかと考えるようになりました。

クラフトビールがもたらす本業へのシナジー

クラフトビールがもたらす本業へのシナジー

ビール醸造の事業を計画した当初は、イベントでの樽の提供をメインで考えていたのですが、コロナ真っ只中でイベントが激減していたこともあり当初の事業計画では難しいことが予想されました。そこで考えたのが「依頼者と1から醸造するODM*の事業スタイル」でした。依頼主がビールを提供するイベントや催事のコンセプトに合わせて、レシピ開発、仕込み、充填、ラベル貼りまで並走するといった内容です。 200Lの少量生産のODMのみの事業モデルはクラフトビール業界の中でも珍しいと思います。儲けには繋がりにくいビジネスモデルだから他社さんはやりたがらないと思いますね。 なぜNakatsu Breweryがこのビジネスモデルを実現できているかというと、あくまで本業へのシナジーを生むことに加え、「にぎわい」と「つながり」を創出し街の居心地を長期的により良く、持続可能な街づくりに取り組むことを念頭においているからなんです。 Nakatsu breweryが入居している西田ビルのコンセプトや思いに理解共感した依頼者と1からクラフトビールを作ることで、結果的にビルや街を知ってもらう広告媒体としての役割も果たしてくれますし、多様な方が出入りするきっかけにも繋がります。 ただ、最初は「中津でクラフトビールを作る」と説明しても、会社の定款にビール製造が入っていないので、社員一同ポカーンとしてました。宇宙人のような扱いをされましたね(笑)最終的には社長が後押しをしてくれて何とか事業がスタートできました。開業後はビールを提供イベントに参加していた社員が積極的に方々に営業を手伝ってくれたり、ホップ栽培事業を方々に話してくれたり、実績を通してNakatsu Breweryがやりたいことが伝わるにつれて協力してくれる方が増えていきましたね。 ※ODMとは、Original Design Manufacturingの略語で、委託者のブランドで製品を設計・生産することをいいます

街づくりとクラフトビールは似ている

小規模ODM事業で数々の副原料やコンセプトで様々なビアスタイルを手がけてきたNakatsu Brewery。鈴木氏に得意とするビアスタイルについて詳しく聞いた。

街づくりとクラフトビールは似ている

セゾンが得意ですね。これまで醸造してきた液種の中でも、もっとも仕込み回数が多いビールです。ブルワリー立ち上げ当初に「Thanks saison」というネーミングで醸造しました。ビアスタイルにセゾンを選んだのは、お酒が得意な人も、そうでない人も、みんなで乾杯できる「飲みやすいビアスタイル」を重視して選んだためです。 私は「楽しみ方のバリエーションが多いこと」がクラフトビールの魅力だと思っています。複数のビアスタイルがあって、自分にぴったりのビールを探す探求心をくすぐられたり、詳しく知らない人同士で色んなビールを飲み交わして交友が生まれたり、クラフトビールにはワインや、ウイスキーなどとは雰囲気の違うパブリックな魅力を感じています。 街づくりも同じで、その地域にその地域特有の人・文化・ものなど色んな魅力がある。ホップ栽培で繋がった緑化事業、コミュニティ事業、ビール醸造事業でシナジーが生まれているのは、どの事業でも大切にしているポイントが同じだからだと思います。 だからこそNakatsu Breweryはクラフトビール好きのお客さんだけではなく、地域住民、その噂を聞きつけた企業、まちに関わりたい学生などの様々なステークホルダーが集まる場として機能しており、結果的に著名な設計会社が興味を持ってPJに参画したり、魅力あるテナントさんが入居を決めていただくなど、相乗効果も生まれています。

大阪のクラフトビール文化に寄せる思い

街づくりとクラフトビールは似ている

クラフトビール事業は収益を出すのが結構難しいと認識しているのですが、それに反してブルワリーの数は増加している。かなりいびつな業界でもあると思うんです。そんなクラフトビール業界を造り手が疲弊することなく、業界全体が活気づくように盛り上げていきたいと思っています。 また、Nakatsu Breweryでビール醸造を開始する前に大阪の他社ブルワリーで修行させてもらった際、分からない事を聞くと、包み隠さず何でも教えてくれるオープンマインドが根付いているカルチャーが好きでした。一作り手としてそのオープンマインドを大切にしながら、まずはやってみなはれの精神で色んな事にチャレンジして行きたいし、そんなマインドを持ち合わせた個性あるブルワリーが生まれ続けると大阪のクラフトビール文化はもっと面白くなっていくと思います。

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